検索エンジン各社は2014年以降、欧州のプライバシー関連法に基づき820万件以上のURLを削除審査の対象とし、公共の利益を保護するために約半数を非表示化、残りを拒否してきました。 個人のレピュテーション保護と一般市民の情報アクセス権との間の緊張関係により、GDPR第17条(消去権/忘れられる権利)は世界で最も運用負荷の高い法規定の一つとなっています。2024年だけでも年間の申請URL数は80万件を超え、欧州のデータ保護当局は民間企業の遵守体制に関する大規模な合同監査を実施しました。以下の数値は、Google Transparency Report、Microsoft Bing Transparency Center、European Data Protection Board(EDPB)、Commission Nationale de l’Informatique et des Libertés(CNIL)、Agencia Española de Protección de Datos(AEPD)の公表資料に基づいています。
TL;DR
- Googleは2014年5月以降、210万件以上の申請を通じて820万件超のURLを審査(Google Transparency Report)
- Googleは380万件超のURLを非表示化し、通算承認率は約47%(Google Transparency Report)
- 2024年におけるGoogleへの年間削除申請は80万件を超え、前年比で約40%増加(Google Transparency Report)
- 検索エンジンに提出される全申請の約86%が個人からの申請(Google Transparency Report)
- フランスからの申請者が欧州首位で、審査申請されたURLは150万件超(Google Transparency Report)
- ドイツからの申請者が続き、140万件超のURLが審査対象に(Google Transparency Report)
- 英国のユーザーは2014年のコステハ判決以降、110万件以上のURLを申請(Google Transparency Report)
- EUにおけるMicrosoft Bingの承認率は法域により17%から60%まで幅がある(Microsoft Bing Transparency)
- European Data Protection Boardは2025〜2026年の監査で32当局管内の764事業者を調査(EDPB)
- EDPBはEU全体におけるGDPR第17条の組織的遵守状況を「平均的」と判定(EDPB)
- フランスのCNILは2024年に過去最多となる17,772件の苦情を受理(CNIL)
- スペインのAEPDは2025年に前年比64%増となる過去最多の30,931件の申立を処理(AEPD)
- AEPDは調停手続きを活用し、権利申立の88%を制裁金なしで平均77日以内に解決(AEPD)
1. Google Search Delisting Volume Reaches 8.2 Million URLs
検索エンジンにおける非表示処理(delisting)の規模は、個別の司法救済措置という枠組みをはるかに超え、大規模な自動処理パイプラインへと移行しました。欧州司法裁判所による画期的なコステハ判決から10年以上が経過した現在も、Googleには毎年数十万件のURLが申請されており、デジタル上の痕跡を管理する権利意識が一般市民に定着していることを裏付けています。消費者権利の全体像は当社のデジタルプライバシー統計をご覧ください。
| Metric | Value | Source |
|---|---|---|
| Googleが審査した累計URL数 | 820万件超 | Google Transparency Report |
| 提出された削除申請の総数 | 210万件超 | Google Transparency Report |
| 2024年単年に申請されたURL数 | 80万件超 | Google Transparency Report |
| 2024年申請件数の前年比増加率 | 約40% | Google Transparency Report |
| 申請1件あたりの平均URL数 | 約3.9件 | Google数値からの算出 |
| 個人からの申請が占める割合 | 約86% | Google Transparency Report |
出典: Google Transparency Report, Requests to delist content under European privacy law.
2. Geographic Concentration: France, Germany, and the UK Lead Filings
忘れられる権利の行使状況は、確立されたデータ保護文化を持つ西欧の主要国に集中しています。フランス、ドイツ、英国の3カ国だけで主要検索エンジンが審査した全URLの約半数を占めており、規模の小さいEU加盟国からの申請はわずかな割合にとどまります。個人情報露出のリスク実態については当社の個人情報盗難統計をご覧ください。
| Metric | Value | Source |
|---|---|---|
| フランスから申請・審査されたURL数 | 150万件超 | Google Transparency Report |
| ドイツから申請・審査されたURL数 | 140万件超 | Google Transparency Report |
| 英国から申請・審査されたURL数 | 110万件超 | Google Transparency Report |
| 上位3カ国が占める累計シェア | 約49% | Google数値からの算出 |
| スペインから申請・審査されたURL数 | 55万件超 | Google Transparency Report |
| イタリアから申請・審査されたURL数 | 50万件超 | Google Transparency Report |
出典: Google Transparency Report, European privacy requests country breakdown.
3. Delisting Outcomes and Public Interest Balancing
忘れられる権利は無条件の絶対的権利ではなく、個人のプライバシーと表現の自由や国民の知る権利とをプラットフォームが慎重に比較考量することが義務付けられています。対象情報が公人、職業上の不正行為、未解決の刑事訴訟、報道機関の過去アーカイブに関連する場合、検索エンジンは申請の約半数を拒否します。情報アクセスの変遷については当社のAI検索統計をご覧ください。
| Metric | Value | Source |
|---|---|---|
| Googleにより非表示化された累計URL数 | 380万件超 | Google Transparency Report |
| 非表示化が拒否された累計URL数 | 320万件超 | Google Transparency Report |
| Googleにおける通算承認率 | 約47% | Google数値からの算出 |
| 通算拒否率 | 約39% | Google数値からの算出 |
| 保留中または追加情報要請中の割合 | 約14% | Google数値からの算出 |
| 2019年CJEU判決による地理的適用範囲 | EUドメインおよび域内IPのみ | CJEU / Google Transparency Report |
出典: Google Transparency Report, Delisting decision criteria.
4. Microsoft Bing Delisting Dynamics and Jurisdictional Variation
Googleの圧倒的なシェアの一方で、代替検索エンジンも同一の法規制の下で数万件の申請を処理していますが、その判断傾向には顕著な差異が見られます。Microsoft Bingの透明性データによると、加盟国間での承認率には大きな開きがあり、過去の情報や過剰なデータとみなす法的基準に各国の解釈差が存在することが浮き彫りになっています。
| Metric | Value | Source |
|---|---|---|
| BingのEU内削除承認率の範囲 | 17%〜60% | Microsoft Bing Transparency |
| 承認率が高い加盟国(オーストリア等) | 約60% | Microsoft Bing Transparency |
| 承認率が低い加盟国(ブルガリア等) | 約17% | Microsoft Bing Transparency |
| BingにおけるEU全体の平均承認率 | 約38% | Microsoft Bing Transparency |
| Bingにおける主な申請者カテゴリー | 個人 | Microsoft Bing Transparency |
| 非表示後の元コンテンツの状態 | 送信元ウェブサーバー上に保持 | Microsoft Bing Transparency |
出典: Microsoft Bing Transparency Center, Right to be forgotten content removal requests.
5. EDPB 2026 Coordinated Audit: Article 17 GDPR Across 764 Controllers
規制当局の監視は検索エンジンの枠を超え、一般企業がGDPR第17条に基づく削除要求にどう対応しているかの実態解明へと拡大しました。欧州データ保護会議(EDPB)が32の監督機関と実施した合同調査では、中堅・大手工企業がレガシーシステム、分散バックアップ、曖昧なデータ保持期間の管理に苦慮している実態が明らかになりました。制裁金の動向については当社のGDPR制裁金統計をご覧ください。
| Metric | Value | Source |
|---|---|---|
| 各国当局が監査したデータ管理者数 | 764 | EDPB |
| 調査に参加した欧州の監督機関(DPA) | 32 | EDPB |
| 実施された正式調査の件数 | 9機関 | EDPB |
| 事実確認・情報収集調査の件数 | 23機関 | EDPB |
| 組織的な法遵守状況の総合評価 | 平均的(Average) | EDPB |
| 最終監査報告書の採択日 | 2026年2月18日 | EDPB |
| 特定された主な運用上のボトルネック | 7つの技術的課題 | EDPB |
出典: European Data Protection Board, Report on the 2025 Coordinated Action on the Right to Erasure.
6. Regulatory Enforcement: CNIL and AEPD Complaint Records
検索エンジンや一般企業が削除要求を拒否した場合、国のデータ保護当局が市民にとっての主要な異議申立窓口となります。フランスとスペインにおける苦情件数は2024年から2025年にかけて過去最多を更新し、当局は急増する申立に対応するため迅速な調停枠組みや行政罰の執行を強化しています。
| Metric | Value | Source |
|---|---|---|
| CNILが受理した年間苦情数(2024年) | 17,772件 | CNIL |
| CNILが2024年に処理完了した苦情数 | 15,639件 | CNIL |
| CNILが発令した正式制裁件数 | 87件 | CNIL |
| CNILによる制裁金総額 | 5,500万ユーロ超 | CNIL |
| AEPDが受理した年間申立数(2025年) | 30,931件 | AEPD |
| AEPDにおける申立件数の前年比増加率 | +64% | AEPD |
| AEPDにおける制裁金なしの調停解決率 | 88% | AEPD |
出典: CNIL Annual Activity Report 2024 および AEPD Annual Report 2025.
Summary: Right to be Forgotten by the Numbers
| Metric | Value | Source |
|---|---|---|
| Googleが審査した累計URL数 | 820万件超 | Google Transparency Report |
| Googleへの総削除申請件数 | 210万件超 | Google Transparency Report |
| 2024年単年に申請されたURL数 | 80万件超 | Google Transparency Report |
| Googleにより非表示化された累計URL数 | 380万件超 | Google Transparency Report |
| Googleにより拒否された累計URL数 | 320万件超 | Google Transparency Report |
| Googleにおける全体承認率 | 約47% | 算出データ |
| 個人からの申請割合 | 約86% | Google Transparency Report |
| フランスから審査されたURL数 | 150万件超 | Google Transparency Report |
| ドイツから審査されたURL数 | 140万件超 | Google Transparency Report |
| 英国から審査されたURL数 | 110万件超 | Google Transparency Report |
| スペインから審査されたURL数 | 55万件超 | Google Transparency Report |
| イタリアから審査されたURL数 | 50万件超 | Google Transparency Report |
| BingにおけるEU内承認率の範囲 | 17%〜60% | Microsoft Bing Transparency |
| BingにおけるEU全体平均承認率 | 約38% | Microsoft Bing Transparency |
| EDPB調査の対象管理者数 | 764 | EDPB |
| EDPB調査に参加した保護当局数 | 32 | EDPB |
| EDPBによる総合遵守状況の評価 | 平均的 | EDPB |
| CNILが2024年に受理した苦情数 | 17,772件 | CNIL |
| AEPDが2025年に受理した申立数 | 30,931件 | AEPD |
Methodology and Sources
- 欧州のプライバシー保護法に基づく検索非表示申請の累積データおよび国別データは、Google Transparency Report, Requests to delist content under European privacy law から取得しています。
- 代替検索エンジンにおける申請量および地域別承認率は、Microsoft Bing Transparency Center, Right to be forgotten content removal requests を情報源としています。
- GDPR第17条の企業運用状況および技術的課題の分析は、European Data Protection Board, Report on the 2025 Coordinated Action on the Right to Erasure に基づいています。
- 各国における苦情受付件数、迅速調停、制裁金の執行データは、CNIL Annual Activity Report 2024 および AEPD Annual Report 2025 から引用しています。
- Data watch: 検索エンジンの非表示統計は、個人名検索に対して表示除外の審査を受けたURLを指し、ウェブサーバー上からの元コンテンツの物理的削除とは異なります。GoogleおよびMicrosoft Bingは2014年以降の累積値と定期レポートを公表しており、国ごとの承認率はプライバシーと知る権利に関する司法的判断の違いを反映しています。CNILやAEPDの苦情統計はGDPR第15条〜22条の全体を対象としており、第17条の消去権が主要項目となっています。EDPBの合同監査は764組織を対象に実施されました。算出データと記された行は公表数値に基づく四則演算です。
- Last updated: August 22, 2026. 検索エンジン各社や欧州の監督機関による新たな透明性レポートの公表に合わせて、四半期ごとに本調査を更新しています。