OECD加盟36か国のうち31か国が政府の内部プロセスですでにAIを利用しているが、政策立案を支援するために利用しているのは13か国にとどまる。 裏方業務での導入と政策業務での導入との間にある約50ポイントの差こそ、公共部門のAIデータが示す最も明確なシグナルだ。政府は影響が限定的な領域では積極的にこの技術を取り入れる一方、市民に影響する意思決定の領域では慎重な姿勢を崩していない。その一方でOECDは、公務員が監督の仕組みの整備が追いつかないほどの速さで生成AIを取り入れつつあると報告している。以下の数値は、OECD Digital Government Outlookおよび関連する公共ガバナンス研究に基づく。
TL;DR
- OECD加盟36か国中31か国が内部プロセスでAIを利用、約86%(OECD)
- 2年前の33か国中23か国、約70%から上昇(OECD)
- 36か国中27か国が行政サービスでAIを利用、約75%(OECD)
- 33か国中22か国、約67%から上昇(OECD)
- 政策立案でAIを利用しているのは36か国中わずか13か国、約36%(OECD)
- 33か国中11か国、約33%から上昇(OECD)
- 内部利用は約16ポイント上昇(算出)
- 行政サービスでの利用は約8ポイント上昇(算出)
- 政策立案での利用は約3ポイント上昇(算出)
- 内部利用と政策立案の差は約50ポイント(算出)
- 内部の人材スキル不足が最も多く挙げられる障壁(OECD)
- 公務員はしばしば正式な監督なしに生成AIを導入している(OECD)
- 測定対象国の数は調査回ごとに33か国から36か国に増加(OECD)
1. 内部利用はほぼ普及済み
内部プロセスの数字は、最初の議論にすでに勝った技術の姿を示している。OECD加盟36か国中31か国、約86%が内部プロセスでAIを利用しており、前回調査の33か国中23か国、約70%から上昇した。
2年間で16ポイント上昇したことで、内部でのAI利用はもはや実験的と呼べる段階を超えている。まったく利用していないと報告した国は測定対象のうちわずか5か国にすぎない。このパターンはリスクの所在を考えれば理にかなっている。文書処理、翻訳、スケジュール調整、内部検索といった領域では、誤りが生じても結果を依頼した本人がそれに気づき、市民が悪い結果の影響を受けることはない。政府はまさに説明責任の問題が生じない場面でこそ最も積極的にAIを導入してきたのであり、これは臆病な姿勢というより合理的な順序づけだと言える。
| 指標 | 値 | 出典 |
|---|---|---|
| 内部プロセスでAIを利用する国 | 36か国中31か国 | OECD |
| 割合 | 約86% | OECD |
| 前回調査 | 33か国中23か国 | OECD |
| 前回の割合 | 約70% | OECD |
| 変化 | 約16ポイント上昇 | OECDのデータから算出 |
| 内部でAIを利用していない国 | 36か国中5か国 | OECDのデータから算出 |
| 未利用の割合 | 約14% | OECDのデータから算出 |
| 内部利用の状況 | 実験段階を超えた | 算出 |
出典:OECD Digital Government Outlook 2026、政府におけるAIの導入と規律について。
2. 行政サービスは内部利用に後れを取る
市民向けの展開は明らかに一歩遅れている。36か国中27か国、約75%が行政サービスでAIを利用しており、33か国中22か国、約67%から上昇した。
8ポイントの上昇は内部利用のペースの半分にすぎず、両カテゴリー間の差は11ポイントに広がり、縮まるどころかむしろ拡大している。この乖離は示唆に富む。行政サービスへの展開には法的リスク、平等性への配慮、不服申立ての権利、そして自動化された決定を不利益を受けた本人に説明する実務上の難しさが伴う。ここでは9か国が依然としてまったく利用していないと報告している。86%と75%の差は絶対値としては大きくないが、両方のカテゴリーが上昇する中でこの差自体が広がったという事実は、市民向け利用への制約が単に政府の追いつきの遅れではなく、構造的な性質を持つことを示唆している。
| 指標 | 値 | 出典 |
|---|---|---|
| 行政サービスでAIを利用する国 | 36か国中27か国 | OECD |
| 割合 | 約75% | OECD |
| 前回調査 | 33か国中22か国 | OECD |
| 前回の割合 | 約67% | OECD |
| 変化 | 約8ポイント上昇 | OECDのデータから算出 |
| 行政サービスでAIを利用していない国 | 36か国中9か国 | OECDのデータから算出 |
| 内部利用との差 | 約11ポイント | OECDのデータから算出 |
| 差の方向性 | 拡大 | OECDのデータから算出 |
3. 政策立案はほとんど進展していない
3つ目のカテゴリーでは導入がほぼ完全に止まっている。政策立案の支援にAIを利用しているのは36か国中わずか13か国、約36%で、同じ期間で33か国中11か国、約33%から上昇したにすぎない。
2年間で3ポイントの上昇はほぼ横ばいに近く、分母が増えていることを踏まえればむしろ実質的な変化はないとも言える。23か国はそうした利用がないと報告している。OECDはまた、アカウンタビリティ(説明責任)に関する活動における導入が特に限定的であると指摘している。この慎重さにはそれなりの理由がある。政策分析には価値判断をめぐる対立、検証が難しい因果関係の主張、そして立法や司法の審査に耐えなければならない結果が伴うためで、いずれも推論過程を完全には検証できないシステムには適さない。しかし実際の結果として、AIは政府の行政運営のあり方を変えつつある一方で、意思決定のあり方にはほとんど手を付けていない。
| 指標 | 値 | 出典 |
|---|---|---|
| 政策立案でAIを利用する国 | 36か国中13か国 | OECD |
| 割合 | 約36% | OECD |
| 前回調査 | 33か国中11か国 | OECD |
| 前回の割合 | 約33% | OECD |
| 変化 | 約3ポイント上昇 | OECDのデータから算出 |
| 政策立案でAIを利用していない国 | 36か国中23か国 | OECDのデータから算出 |
| 内部利用との差 | 約50ポイント | OECDのデータから算出 |
| アカウンタビリティ活動での導入 | こちらも限定的 | OECD |
労働市場の文脈については、当サイトのAIが雇用に与える影響の統計を参照。出典:OECD Digital Government Outlook 2026。
4. ガバナンスのギャップ
最も重大な発見は割合ではなく、両者のずれである。OECDは、公務員が正式な監督のないまま生成AIの利用を急速に広げており、迅速な分権的な普及と遅れる公共ガバナンスの仕組みとの間に広がるギャップがあると報告している。
調査によれば、相当な割合の公務員がすでにオープンアクセスの生成AIツールを業務に利用しているという。これは典型的なシャドー導入の例であり、職員は許可の有無を定める方針が整う前に、手元にあるもので目の前の課題を解決している。OECDが指摘する具体的な危険はデータ保護であり、組織の方針に反する形で外部ツールを利用すると、政府データが管理された環境の外に持ち出される可能性がある。これが典型的なシャドーIT問題より厄介なのは、こうしたツールが無料で調達手続きを必要とせず、ほとんど痕跡を残さないため、組織内でかなりの量のAI利用が起きていても、それを示す記録が一切残らない場合があるという点だ。
| 指標 | 値 | 出典 |
|---|---|---|
| 確認されたパターン | 分権的な普及がガバナンスを上回るペースで進行 | OECD |
| 正式な監督 | しばしば存在しない | OECD |
| オープンアクセスの生成AIを利用する公務員 | 相当な割合 | OECD |
| 挙げられた主なリスク | データ保護 | OECD |
| リスクの仕組み | 組織の方針・規制との抵触 | OECD |
| 必要な調達手続き | オープンアクセスツールには不要 | 算出 |
| 組織からの可視性 | 低い | 算出 |
| 差の方向性 | 拡大 | OECD |
出典:政府における生成AIの実験に関するOECDワーキングペーパー。
5. スキルが制約の核心である
政府がAI導入を阻む要因を説明するとき、一つの答えが際立つ。内部の人材スキル不足は、公共部門におけるAI導入の障壁として一貫して最も重大なものに挙げられており、時間的プレッシャー、リスクへの懸念、イノベーションのための能力不足を上回っている。
この順位は真剣に受け止める価値がある。というのも、外部の論調の多くが想定する答えとは異なるからだ。世間の議論は障壁を規制上の慎重さや予算不足として捉えがちだが、行政機関自身が指摘しているのは能力の問題である。OECDの人材分析は、公共部門の労働力の中に3つの異なるグループを特定しており、それぞれがまったく異なる研修の枠組みを必要とするとしている。これは多くの機関が導入してきた画一的なプログラムに疑問を投げかけるものだ。実務上の含意は、一般的なAIリテラシー研修だけではこの制約を動かせる可能性が低いということである。なぜなら、調達を評価する必要がある人、ツールを安全に使う必要がある人、ツールを構築する必要がある人では、求められる準備がまったく異なるからだ。
| 指標 | 値 | 出典 |
|---|---|---|
| 最も多く挙げられる障壁 | 内部の人材スキル不足 | OECD |
| そのほかに挙げられた障壁 | 競合するタスクによる時間的プレッシャー | OECD |
| 同じく挙げられた要因 | 生成AIのリスクへの懸念 | OECD |
| 同じく挙げられた要因 | 革新的な手法のための能力不足 | OECD |
| 結果 | 有望な応用事例の特定と拡大が遅れる | OECD |
| 特定された労働力の異なるグループ数 | 3 | OECD |
| 各グループに必要なもの | まったく異なる研修アプローチ | OECD |
| 疑問視されているアプローチ | 画一的な研修 | OECD |
教育分野との共通点は当サイトのAI教育統計、モデルの利用可能性に関する文脈はオープンソースAI統計にまとめている。出典:OECD、AI対応可能な公共部門の人材育成。
6. 分母が隠していること
ある方法論上の詳細が、これらの傾向の読み方を変える。測定対象国の数は調査回ごとに33か国から36か国に増えており、そのため年ごとの割合の比較はすべて、実際の導入拡大と分母の変化が入り混じったものになる。
割合ではなく国の数で見ると、内部利用は8か国、行政サービスは5か国、政策立案は2か国それぞれ増加した一方で、調査には新たに3か国が加わっている。これら3か国が加入時点ですでにAIを利用していたかどうかによって、見かけ上の増加の一部は調査対象の拡大を反映しているにすぎない可能性がある。これは主要な結論を覆すものではない。8か国分の増加を新規加入国3か国だけで説明することはできないからだ。しかしこれは、3つの指標のうち政策立案の数字が最も不安定であることを意味する。新規加入国3か国に対して2か国分の増加というのは、当初から測定されていた国々の間で実質的な変化がまったくなかったとしても十分に整合的な数字である。
| 指標 | 値 | 出典 |
|---|---|---|
| 測定対象国、前回調査 | 33か国 | OECD |
| 測定対象国、今回調査 | 36か国 | OECD |
| 追加された国 | 3か国 | OECDのデータから算出 |
| 内部利用の増加、国数 | 8か国 | OECDのデータから算出 |
| 行政サービスの増加、国数 | 5か国 | OECDのデータから算出 |
| 政策立案の増加、国数 | 2か国 | OECDのデータから算出 |
| 最も不安定な傾向はどれか | 政策立案 | 算出 |
| データ収集方法 | 各国行政機関による自己申告 | OECD |
まとめ:数字で見る政府におけるAI
| 指標 | 値 | 出典 |
|---|---|---|
| 内部プロセス、今回調査 | 36か国中31か国(約86%) | OECD |
| 内部プロセス、前回調査 | 33か国中23か国(約70%) | OECD |
| 変化 | 約16ポイント上昇 | 算出 |
| 行政サービス、今回調査 | 36か国中27か国(約75%) | OECD |
| 行政サービス、前回調査 | 33か国中22か国(約67%) | OECD |
| 変化 | 約8ポイント上昇 | 算出 |
| 政策立案、今回調査 | 36か国中13か国(約36%) | OECD |
| 政策立案、前回調査 | 33か国中11か国(約33%) | OECD |
| 変化 | 約3ポイント上昇 | 算出 |
| 内部利用と政策立案の差 | 約50ポイント | 算出 |
| 内部でAIを利用していない国 | 36か国中5か国 | 算出 |
| 行政サービスでAIを利用していない国 | 36か国中9か国 | 算出 |
| 政策立案でAIを利用していない国 | 36か国中23か国 | 算出 |
| 最も多く挙げられる障壁 | 内部の人材スキル不足 | OECD |
| ガバナンスのパターン | 導入が監督を上回るペースで進行 | OECD |
| 特定された労働力の異なるグループ数 | 3 | OECD |
| 測定対象国数の変化 | 33か国から36か国 | OECD |
方法論と出典
- 内部プロセス、行政サービス、政策立案における導入数と割合は、Digital Government Indexに基づくOECD Digital Government Outlookの「政府におけるAIの導入と規律」の章から得ている(OECD、OECD.AIのリソース、OECD.AIの出版物)。
- ガバナンスのギャップに関する知見と生成AI実験のパターンは、OECD Working Papers on Public Governance No. 93による(OECDワーキングペーパーPDF、OECD出版物ページ)。
- 人材とスキルに関する知見は、OECDによる公共部門の人材分析から得ている(OECDによる全文レポート、OECD出版物ランディングページ)。
- データに関する注記:すべての導入数値は、OECDの調査に回答した各国行政機関による自己申告であり、AIを利用していると報告する国はそれを証明しているのではなく主張しているにすぎず、利用者としてカウントする基準は回答者間で標準化されていない。測定対象国の数は調査回ごとに33か国から36か国に増えており、年ごとの割合比較は厳密には同一条件の比較ではなく、3つの傾向のうち最も小さい政策立案の数値は、当初測定されていた国々の間で実質的な変化がまったくなかったとしても矛盾しない。ここでの割合は公表された国数から算出し、四捨五入している。OECDの補足的な出版物のいくつかはアクセス制限の対象となっているため、障壁の順位は回答割合ではなくOECDが記述する形で定性的に示している。「算出」と記された行は公表された数値に基づく計算である。
- 最終更新:2026年8月2日。本記事は四半期ごとに更新しており、次回の大幅な更新はOECDがDigital Government Indexの新しい調査結果を公表する時期を見込んでいる。