75%の人が少なくとも1つのアカウントでパスキーを有効化しているが、選択肢が用意されている場合に実際に日常的にパスキーを使っているのは49%にすぎない。 この26ポイントの差こそ、2026年におけるパスキー普及の物語そのものだ。認知度は事実上90%で決着がついており、設定作業は広く行き渡っているが、日常的な利用は依然としてその両方に大きく後れを取っている。企業側でも同じパターンがより鮮明な形で繰り返されており、82%の組織が完全なパスワードレス認証を目標に掲げる一方、実際に到達したのは28%にとどまる。FIDOアライアンスは現在、流通しているパスキーの数を50億個と推計している。以下の数字は、Sapio Researchが10カ国の消費者11,000人を対象に行った調査に基づく、FIDOアライアンスの2026年版レポートによるものだ。
要点まとめ
- 現在90%の人がパスキーを認知している(FIDOアライアンス、2026年)
- 75%が少なくとも1つのアカウントでパスキーを有効化した(FIDOアライアンス、2026年)
- 利用可能な場合に日常的にパスキーを使っているのは49%にとどまる(FIDOアライアンス、2026年)
- 有効化と日常的な利用の差は26ポイントである(FIDOのデータから算出)
- 世界で使われているパスキーは推計50億個である(FIDOアライアンス、2026年)
- 68%の組織が従業員向けにパスキーを導入済み、または導入を進めている(FIDOアライアンス、2026年)
- 82%が完全なパスワードレス認証を最終目標に掲げている(FIDOアライアンス、2026年)
- 完全なパスワードレスの従業員認証を達成したのはわずか28%である(FIDOアライアンス、2026年)
- 目標と達成の差は54ポイントである(FIDOのデータから算出)
- 調査対象は消費者11,000人である(FIDOアライアンス、2026年)
- 4つの大陸にまたがる10カ国が調査対象となった(FIDOアライアンス、2026年)
- 現地調査は2026年4月に実施された(Sapio Research)
- 調査結果は2026年5月のワールドパスキーデーに発表された(FIDOアライアンス)
1. もはや認知度は問題ではない
パスキー展開の大半の期間において、業界が挙げてきた障害は、パスキーが何なのか誰も知らないという点だった。その主張はもはや通用しない。現在90%の人がパスキーを認知しており、前年から大幅に上昇している。この水準は、消費者向けセキュリティ技術の大半が到達できない高さだ。2026年に普及を妨げているものが何であれ、それは人々がこの技術について一度も耳にしたことがないから、というわけではない。
| 指標 | 値 | 出典 |
|---|---|---|
| パスキーの認知度 | 90% | FIDOアライアンス、2026年 |
| 前年からの変化 | 大幅に上昇 | FIDOアライアンス、2026年 |
| 少なくとも1つのアカウントで有効化した割合 | 75% | FIDOアライアンス、2026年 |
| 利用可能な場合に日常的に使う割合 | 49% | FIDOアライアンス、2026年 |
| 認知しているが有効化していない | 約15ポイント | FIDOのデータから算出 |
| 有効化したが日常的には使っていない | 約26ポイント | FIDOのデータから算出 |
| 世界で使われているパスキーの推計数 | 50億個 | FIDOアライアンス、2026年 |
| 調査サンプル数 | 11,000人 | FIDOアライアンス、2026年 |
算出された行は、公表された3つの割合を差し引きしたものであり、別々に測定された集団を示すものではなく、ファネルからの脱落を表している。出典:FIDOアライアンス、世界的なパスキー普及の加速を報告。
2. 有効化と利用の間のギャップ
このデータセットの中で最も重要な数字は、2つの数字の間にあるものだ。75%がどこかでパスキーを有効化しているにもかかわらず、その選択肢がある場合に日常的にパスキーを使っているのは49%にすぎない。つまり、パスキーを設定した人のおよそ3人に1人は、習慣的にそれを使っていないことになる。このパターンは二要素認証でも見られたもので、登録が日常的な利用を長年にわたって上回り続けていた。
| 指標 | 値 | 出典 |
|---|---|---|
| 少なくとも1つのパスキーを有効化 | 75% | FIDOアライアンス、2026年 |
| 利用可能な場合に日常的に使う | 49% | FIDOアライアンス、2026年 |
| 絶対的なギャップ | 26ポイント | FIDOのデータから算出 |
| 有効化した人のうち日常的な利用者の割合 | 約65% | FIDOのデータから算出 |
| 認知度の上限 | 90% | FIDOアライアンス、2026年 |
| 認知から有効化への転換率 | 約83% | FIDOのデータから算出 |
| 認知から日常的な利用への転換率 | 約54% | FIDOのデータから算出 |
| 流通している認証情報の推計数 | 50億個 | FIDOアライアンス、2026年 |
認知度は約83%の割合で有効化につながり、約54%の割合で日常的な利用につながる。つまり漏れが集中しているのは設定の段階ではなく、習慣が形成される段階だということだ。この違いは、解決策の見え方そのものを変える。キャンペーンや通知は人々を認知から有効化へと導けるが、一度きりの設定フローそのものは、次にログイン画面が現れたときにその人がパスキーに手を伸ばすかどうかまでは決めない。そこで決め手となるのは、利用の瞬間においてパスキーの経路がパスワードの経路よりも速く信頼できるかどうかであり、これは標準化団体ではなく各サービスが個別に抱える実装上の課題だ。認証情報全般の背景についてはパスワードセキュリティ統計の記事を参照。出典:2026年FIDOパスキーレポートの報道。
3. 企業導入の実態
組織は導入のスピードでは個人より先行しているが、完了までの道のりでは遅れをとっている。68%の組織が従業員のログイン用にパスキーを導入済み、または積極的に導入を進めており、82%が完全なパスワードレス認証を最終目標に掲げているが、実際に達成したのは28%にすぎない。 目標と達成の間にある54ポイントの差は、消費者側のどの数字よりも大きく、レガシーシステムへの依存を考えれば当然の結果だといえる。
| 指標 | 値 | 出典 |
|---|---|---|
| パスキーを導入済み、または導入を進めている組織 | 68% | FIDOアライアンス、2026年 |
| 完全なパスワードレスを最終目標に掲げる組織 | 82% | FIDOアライアンス、2026年 |
| 完全なパスワードレスの従業員認証を達成した組織 | 28% | FIDOアライアンス、2026年 |
| 目標と達成の差 | 54ポイント | FIDOのデータから算出 |
| 目標を掲げた組織のうち到達済みの割合 | 約34% | FIDOのデータから算出 |
| 比較用の消費者の日常的利用率 | 49% | FIDOアライアンス、2026年 |
| 比較用の消費者の有効化率 | 75% | FIDOアライアンス、2026年 |
| 導入も検討もしていない組織 | 約32% | FIDOのデータから算出 |
導入率が68%である一方で達成率が28%にとどまっているという状況は、業界全体が移行の途中段階にあることを示している。パスキーはパスワードを置き換えるのではなく、その隣に選択肢として追加されているにすぎない。この中間的な状態こそコストがかさむ段階であり、組織は2つの認証システムを同時に運用する費用を負担しながら、弱い方のシステムが持つ攻撃対象領域をそのまま抱え続けることになる。認証情報管理の背景についてはパスワードマネージャー統計の記事を、脅威の側面についてはフィッシング統計の記事を参照。出典:FIDOアライアンスによる2026年ワールドパスキーデーの発表。
4. データはどのように収集されたか
ここでは方法論が通常以上に重要になる。なぜなら発表元自体が、この技術を推進する標準化団体でもあるからだ。Sapio Researchは2026年4月、FIDOアライアンスの委託を受けて10カ国の消費者11,000人を調査した。対象は北米、欧州、アジア太平洋、南アジアに及ぶ。消費者向けセキュリティ調査としては異例なほど幅広い国の組み合わせであり、単一市場を対象とした調査に比べて、世界的な主張の説得力を高めている。
| 指標 | 値 | 出典 |
|---|---|---|
| 調査機関 | Sapio Research | FIDOアライアンス、2026年 |
| サンプル数 | 消費者11,000人 | FIDOアライアンス、2026年 |
| 対象国数 | 10カ国 | FIDOアライアンス、2026年 |
| 対象国 | 米国、英国、フランス、ドイツ、オーストラリア、シンガポール、日本、韓国、中国、インド | FIDOアライアンス、2026年 |
| 現地調査期間 | 2026年4月 | Sapio Research |
| 発表の機会 | ワールドパスキーデー、2026年5月 | FIDOアライアンス |
| 1カ国あたりの概算回答者数 | 1,100人 | FIDOのデータから算出 |
| 発表元と技術との関係 | 標準化団体であり推進者でもある | FIDOアライアンス |
1カ国あたりの数字は均等な配分を前提としているが、公表された概要はそれを裏付けていないため、あくまで目安として扱うべきである。出典:Las Vegas Sunが伝えたFIDOアライアンスのレポート。
5. 数字が語らないこと
2026年の数字をまとめて見ると、それが表しているのは置き換えではなく追加である。認知度が90%、有効化率が75%に達していても、日常的にパスキーを使っている人は半数に満たず、職場からパスワードを完全になくした組織はわずか28%にすぎない。 パスワードは廃止されているわけではなく、パスキーはその上に積み重ねられているだけであり、パスワードが抱える攻撃対象領域はどこにも消えていない。
| 指標 | 値 | 出典 |
|---|---|---|
| 認知度 | 90% | FIDOアライアンス、2026年 |
| 有効化 | 75% | FIDOアライアンス、2026年 |
| 日常的な利用 | 49% | FIDOアライアンス、2026年 |
| 完全にパスワードレス化した組織 | 28% | FIDOアライアンス、2026年 |
| いまだ導入していない組織 | 約32% | FIDOのデータから算出 |
| 流通している認証情報 | 50億個 | FIDOアライアンス、2026年 |
| 認証情報の数が示すもの | 人数ではなく認証情報の数 | FIDOアライアンス、2026年 |
| パスワードが廃止されつつあるか | 大部分はまだそうなっていない | FIDOのデータから算出 |
50億という数字は、利用者数と誤解されやすい代表格だ。実際には認証情報の数を数えたものであり、スマートフォン、ノートパソコン、十数個のサービスでパスキーを使う1人が、その中の多くをカウントされることになる。
見出しの数字が示す以上に移行が遅い理由がもう1つある。パスワードはどこでも、誰でも、どの端末からでも入力できるものであり、それこそがパスワードを安全でなくしている一方で、この上なく便利にしている理由でもある。これに対してパスキーは端末やプラットフォームのエコシステムに紐づいているため、アカウント復旧、複数人での端末共有、プラットフォームをまたいだログインが、それぞれのサービスが独自に解決しなければならない設計上の課題になる。こうした一連の流れがパスワード入力と同じくらい信頼できると感じられるようになるまでは、パスワードを予備として残しておくのが利用者にとって合理的な行動であり、それこそがまさに有効化と利用のギャップが示していることだ。個人情報の盗難に関する背景については個人情報盗難統計の記事を参照。出典:Descopeによるパスキー動向の分析。
まとめ:数字で見るパスキー普及
| 指標 | 値 | 出典 |
|---|---|---|
| パスキーの認知度 | 90% | FIDOアライアンス |
| 少なくとも1つのパスキーを有効化 | 75% | FIDOアライアンス |
| 利用可能な場合に日常的に使う | 49% | FIDOアライアンス |
| 有効化から利用までのギャップ | 26ポイント | 算出 |
| 認知から有効化への転換率 | 約83% | 算出 |
| 認知から日常的な利用への転換率 | 約54% | 算出 |
| 世界で使われているパスキー | 50億個 | FIDOアライアンス |
| 導入済み、または導入を進めている組織 | 68% | FIDOアライアンス |
| パスワードレスを最終目標に掲げる組織 | 82% | FIDOアライアンス |
| 完全なパスワードレスの従業員認証を達成 | 28% | FIDOアライアンス |
| 目標と達成の差 | 54ポイント | 算出 |
| 導入していない組織 | 約32% | 算出 |
| 調査サンプル数 | 11,000人 | FIDOアライアンス |
| 調査対象国数 | 10カ国 | FIDOアライアンス |
| 調査機関 | Sapio Research | FIDOアライアンス |
| 現地調査期間 | 2026年4月 | Sapio Research |
| 発表の機会 | ワールドパスキーデー、2026年5月 | FIDOアライアンス |
| 1カ国あたりの概算回答者数 | 1,100人 | 算出 |
| 50億という数字が示すもの | 利用者数ではなく認証情報の数 | FIDOアライアンス |
| パスワードが置き換えられているか | ほとんどの場合は並行追加 | 算出 |
方法論と出典
- 認知度、有効化率、日常的な利用率、企業導入、パスワードレス化の目標、認証情報の合計数、そして調査方法はすべて、FIDOアライアンスの2026年版パスキーレポートによるものであり、2026年5月のワールドパスキーデーに発表され、2026年4月に実施されたSapio Researchによる10カ国の消費者11,000人を対象とした調査に基づいている(BusinessWireのリリース、Yahoo Financeの転載、Las Vegas Sunの転載、Morningstarの転載)。
- 同じ発表を扱った独立系の分析についても、一次情報の数字と突き合わせて確認した(Descopeによる2026年FIDOレポート分析、Descopeによるパスキー動向、MojoAuthによる普及分析)。
- データに関する注意点。FIDOアライアンスはパスキーを開発した標準化団体であり、その普及を推進する立場でもあるため、自らの成功指標について中立的な観察者とはいえない。方法論は開示されており、サンプルも大規模かつ多国籍だが、比較可能な数字を公表している独立機関は存在せず、これらの数字を外部から検証する手段はない。50億という認証情報の推計は、人数ではなくパスキーの数を数えたものであり、利用者数に換算することはできない。自己申告による日常的な利用は実際の行動データと突き合わされていないため、回答者が望ましいと考える方向に実際の行動を過大に見せている可能性がある。調査対象となった10カ国は高所得かつ接続性の高い市場に偏っており、世界全体への一般化は弱い。算出と記された行は、公表された割合に基づく計算結果であり、別々に測定された結果ではない。
- 最終更新日:2026年8月1日。この記事は四半期ごとに更新しており、次回の大幅な更新は2027年のワールドパスキーデー前後を予定している。